
Plastic Tree、2年ぶりとなるアルバム『十色定理』をリリース! メンバーの個性が光る内容に注目!
国内外で根強い人気を誇る4人組ロックバンド、Plastic Tree。80年代のブリティッシュロックからグランジ、さらにはパンク、オルタナ、フォークに至るまで幅広い音楽性をミックスさせた音楽性は、デビュー当時から高い評価を得てきた。活動歴もすでに26年目に突入したが、時代にとらわれない楽曲を次々と生み出すパワーは健在! そんな彼らが、2年ぶりとなるアルバム『十色定理』を完成させた。メンバー全員、作詞作曲ができる強みを活かして持ち寄った楽曲には、様々な表情がある。さっそくメンバー全員——有村竜太朗(Vo&G)、長谷川正(B)、ナカヤマアキラ(G)、佐藤ケンケン(Dr)——を招集し、それぞれが作品に込めた思いを語ってもらった。
今回のアルバムはそれぞれの自由課題で曲を作りました(長谷川正)
——ニューアルバムの『十色定理』は2年ぶりになりますね! 待ちましたよ!
長谷川正(以下長谷川):いやいや、別にあいだを空けようとは思わなかったんですけど……。
有村竜太朗(以下有村):アルバムを出す前にも、ちゃんとシングルを2枚出しているので、そんなに久々という感覚はなかったです。
長谷川:制作と並行してツアーもたくさんやるバンドだしね。だから“そろそろ新しいアルバムを出そうか”っていうノリになってきたら出す感じなんです。
——制作スタイルが劇的に変わったわけではないと思いますが、各メンバーの曲が2曲ずつ収録されてますね。最初からそういう配分にしようと決めていたんですか?
長谷川:基本的には、ここ何作かのアルバムの作り方と同じです。みんなで曲を持ち寄って作るスタイルですね。
——ただ、メンバーそれぞれには、曲を作る上で何らかのテーマがあったのでは?
長谷川:前作の『doorAdore』の時は、最初に設計図めいたものがあったんですよ。例えば、1曲目はこういう曲だから、次はこういう曲があるといいよねっていう具合に、プロットを作っていたんです。でも、今回に関しては全くそういう発想がなくて。ホントにそれぞれの自由課題でした。あとは、アルバムのボリューム感として、10曲ぐらいがいいんじゃないかっていう話があったので、既発のシングル2曲をいれたら、それぞれが2曲ずつ持ち寄ればちょうど10曲になるんじゃないかと。
——足し算と引き算と割り算みたいな感じですね(笑)。では個別に自作曲のポイントをうかがいます。まず1曲目の「あまのじゃく」を担当した正さんから——。
長谷川:俺の場合は、シングル2曲を作曲していたので、アルバム曲はもうちょっと趣味丸出しの楽曲でもいいのかなと思って作りました。
——確かに丸出しでした。「あまのじゃく」の出だしなんて、ピンク・フロイドを思わせるようなドラマチックなものでしたし、「スウィング・ノワール」も英国テイスト満載で……。
長谷川:要するに、このバンドでやってみたい音楽ってことですよね。それって他のメンバーも同じだと思いますよ。みんなの曲を聴いた時にそう感じました。
——アキラさんはたまに意表をついた曲を出してくる印象があるんですよ。でも、今回は「メデューサ」も「Light.Gentle.and Soul.」もすごくキャッチーでした。
ナカヤマアキラ(以下ナカヤマ):もうね……“カッコいい曲が出来たな”って感じ。さっき、前作から2年経ったって言ってたけど、自分では2年経ったなんて思ってなかったんだよね。だから“やべぇやべぇ、曲書かなきゃ”って感じでした(苦笑)。でも、曲が出来た時は、超自信があったんですよ。例えるなら、小学生の自由研究が完成したみたいなレベル。“こんなんできちゃったよ!”って。だから、いい作品だと思わせるために理屈をこねずに、もう“どうだ!”って。ダメなら違う曲を出そうって気分で曲を持っていきました(笑)。
——ケンケンさんの「remain」と「月に願いを」は、もう完全にプラ色に染まっているなという印象でしたね。
佐藤ケンケン(以下佐藤):どうなんですかね(笑)。でも、僕はスキマ産業みたいなつもりで曲を書いたんです。
——スキマ産業とは?
佐藤:要は、他の人が作らないような曲を持っていこうかなっていう。
——なるほど! でも、それが逆にPlastic Treeらしいっていうのが面白いですね。
佐藤:まぁ、アレンジはメンバーみんなで考えるので、そこでバンドの色に染まっていくんじゃないですか?
——ちなみに、「月に願いを」はアルバムの中でもしっとりした曲調で印象的でしたね。この並びの中では目立っていると思います。
佐藤:これぐらいのリズム感の曲がないなと思って……。ただ、曲自体は前からあったストック曲なんですよ。
——敢えて他の曲とは違う楽曲を持って行ったわけですね。竜太朗さんはいかがでしたか? かなり歌詞には時間がかかったというエピソードをうかがってますが……。
有村竜太朗(以下有村):歌詞に時間がかからない人なんてあんまりいないと思いますよ(笑)。でも、今回はいつもより(作詞のペースが)早かった気がします。それでもギリギリまで悩んでしまうのは性分なんで。ただ、今回は2曲とも歌詞の書き方は違ってたと思います。
——どういう違いがあるんですか?
有村:「C.C.C.」は割と雰囲気を重視しながら書きました。曲自体、情景をイメージしやすい曲だったんで、素直に日記を書くような感じで書いてます。「エンドロール。」に関しては、アルバム全体を見た時、どこか短編集みたいなイメージがあったんですね。それで、ストーリー性のある曲にしたくて、ちょっと客観的な視点で書きました。物語を書くようなね。もちろん、両方とも自分らしさの感情は十分に入ってますが。
——「エンドロール。」をアルバムのラストに置くというのは決めていたんですか?
有村:そのつもりで書いたわけじゃないんですけど、「エンドロール。」を最後にしようって決めたのは正くんだったんです。なので、歌詞を書きながらアルバム最後の曲になるように少し方向転換していった感じですね。後書きみたいなシメラストの曲にしたいなって。タイトルも「エンドロール。」だし。
——最初から「エンドロール。」というタイトルだったんですか?
有村:いや、歌詞の中に“エンドロール”という言葉が入ってましたからね。それもあって、アルバムの最後になるならそれがいちばんいいんじゃないかなって思いました。
——なるほど。しかも、見事にPlastic Treeの原点を感じさせる曲調ですもんね。こういう曲を好きなファンの方も多いと思います。
有村:ああ、そうですね。自分の最新曲としてはすごく気に入ってますし、大事な曲です。
——「C.C.C.」は最初、何のことかと思いましたが、形容詞なんですね。例えば“うれしい”とか“かなしい”みたいな“しい=C”の使い方という。
有村:楽曲自体に楽しいイメージがあったんです。自分の印象としては。だから、ライブでもラフに楽しめるような感じになったらいいなと思って、あのタイトルにしました。サウンド的にはマンチェスター系というか、『BEAT UK』(90年代に放送されていた深夜の音楽番組)のオープニングで流れるようなイメージだったんですよ。でも、作ってみたらオルタナっぽくなりましたかね。
音源の完成度が高いので、ライブはお客さんも楽しみにしてきてくれるんじゃないかな(有村竜太朗)
——結果、それぞれの個性が出ているので、『十色定理』というアルバム・タイトルらしい内容になりましたね。
有村:アルバムのタイトルは正くんのアイデアなんです。もともとは“四色定理”っていう言葉から来ているんですけど、“十”で今の自分達を全部を分からせることができたら……っていう思いもあって。むしろ“十”っていう言葉が大きかったですね。それで10曲に絞ろうっていう話になったし。
——個人的意見ですが、アルバムって10曲ぐらいがちょうどいいバランスなんじゃないかなって思います。
長谷川:そうなんですよね。俺も最近、再生時間が長いアルバムってどうなのかなって思うんで。リスナーとしても、アルバムを聴く時って身構えるじゃないですか。エネルギーを使うというか。今回に関しては、10曲くらいで本来のアナログアルバムくらいのサイズ感にしたくて。そこに、今の自分達を表現できたらいいなって思いました。
——10曲だと、1回聴いたらもう1回最初から聴こうってなりますもんね。
長谷川:そうそう。腹八分目的な。
——ちなみに、他の人の曲で“これはヤラレたな”って思った曲はありますか?
ナカヤマ:難しい質問だね(苦笑)。この体制で長いことやってきてるから……。まぁ、何作か前には“やられたな、どうするんだこの曲!”っていうのはあったけど(苦笑)。今回は最初から無事にアルバムが出来そうだっていう感じだったよ。しかも、『十色定理』っていうタイトルもついてるから、意外な曲があっても、それで正解っていうことだしね。『一色定理』だったら統一感を出すのが大変だっただろうけど、素直にいい曲が揃ったと思うよ。
長谷川:総括した言い方になるけど、各々にしか作れない曲が集まりましたね。そういう意味ではお互いに“おっ!”と思ったんじゃないかな。ナカちゃんにしろ、ケンちゃんにしろ、竜ちゃんにしろ、俺には作れない曲だなって素直に思いました。でも、それがこのバンドの強みでもあるし、面白みでもあるので。
佐藤:俺は強いて言えば、「C.C.C.」ですかかね。全曲、短めのMVを撮ったんですけど、「C.C.C.」だけフルで撮影したのが印象に残っているので。あと、正さんの「スウィング・ノワール」はライブで面白そうだし、アキラさんの「メデューサ」は最初、みんなで聴いた時に「シングルに取っておいた方がいいんじゃない?」って言っていたぐらい,カッコいいと思いました。
有村:う~ん、だいたいみんなに言われちゃいましたね……(笑)。これまで、さんざんPlastic Treeの曲を作ってきているので、それぞれの“らしい”曲はたくさんあるんだけど、今回はそれの進化形という感じかな。僕自身がバンドにとって新しいなと感じたのは「メデューサ」と「あまのじゃく」ですね。「メデューサ」みたいな曲って、これまでなかったので、レコーディングもドキドキしながら面白がってやれました。ライブもどうなるんだろうって楽しみだし。「あまのじゃく」は正くんにしか作れない曲ですよね。世界観を追求し尽くしてこのメロディーにたどり着いたのが、すごいなって。
——「あまのじゃく」みたいなスケール感のある曲が1曲目というのもインパクトありますね。
長谷川:実はアルバム1曲目にこういう曲があったらいいなって思いながら作ったんです。でも、曲が出そろったら、どれが1曲目でも成立するなって思ったんで、曲順は悩みました。そう考えると、やっぱり自由度の高い作品になったと思いますよ。「あまのじゃく」では、リスナーの人が“これからどこに連れて行かれるんだろう”っていう感覚になってくれたら嬉しいですね。
——確かに、どこに連れていかれるのかと思いました(笑)。でも、どういう曲順になっても正解だったかもしれませんね。
長谷川:もしかしたらライブで演奏する時に曲順をくずしていくのもアリだし。まぁ、ツアーはこれからなので、いろいろ詰めていこうかなって思います。
——次のツアー【Plastic Tree Spring Tour 2020「十色定理」】では新曲がどう表現されていくのか楽しみですね。
長谷川:バンドとしては、ライブで表現する新しい素材が手に入ったので、あとは各メンバーがどう取り組むかっていうところかな。ナカヤマ:ライブはもうひたすら楽しみだね!
佐藤:楽しみです! ただ、毎回だけど、アキラさんの曲は難しいです(苦笑)。
ナカヤマ:や、フタを開けてみたら、やっぱりどの曲も難しかったけどね(苦笑)。
有村:とはいえ、やっぱりライブは楽しみです。どの曲も追求しがいがあるし、ライブで完成していくものですから。音源の完成度が高いので、お客さんも楽しみにしてきてくれるんじゃないなかって、勝手ながら思ってます。まぁ、確かに難しそうな曲ばかりだけど(苦笑)。
——個人的な希望ですが、ワンツアーだけじゃなく、時間をかけて長いツアーでアルバムを掘り下げて欲しいですね。
有村:その辺もおいおい考えたいです。春のツアーは『十色定理』にかけて10公演なんですけど、やっていくうちにバンドがやったことのないような可能性を見いだせたら、完成版みたいなコンセプトの公演があってもいいなって。もちろん、まだ何も決まってませんけどね。とにかくワクワクするアルバムが完成したし、楽しみにしていて欲しいです。
【取材・文:海江敦士】
My recommendation spot in Japan
有村竜太朗
☆富士山
綺麗だから。
長谷川正
京都
日本情緒がいたる所に!
ナカヤマアキラ
日本酒
酒はだいたい喜ばれるのではと。
佐藤ケンケン
長崎市
観て勉強になったり愉しめる名所がたくさんあります
ALBUM
Plastic Tree
『十色定理』
ビクター
【通常盤】
CDのみ
3,000円(+税)
2020年3月25日発売